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健康診断前日の7つのNG行動。食事は何時まで?お酒や運動は?

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会社員なら1年に1度は健康診断を受けているはずですが、じつは前日や当日の正しい過ごし方はあまり知られていません。また、検診結果がよくなったらいいな…という気持ちで、いつもとは違う過ごし方をしてしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、そういった過ごし方の中には「健康診断前のNG行動」が潜んでいることも。そこで、産業医で精神科医の井上智介さん監修のもと、正しい健康診断の結果を得るためにしてはいけないこと、してしまった時の対処などをご紹介します。

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コラムサマリ

■健康診断前日の行動は、診断結果に影響があるの? 基本ルールを確認

■基本ルールは「食事は検診12時間前まで、飲み物は検診2時間前まで」

■健康診断前日に避けたほうがよい7つのNG行動NG行動

  1. 飴、ガムなど固形ではないものを検診12時間前以降~直前まで食べるNG行動
  2. 脂質の多いものを大量に食べるNG行動
  3. お酒やコーヒーを大量に飲むNG行動
  4. ビタミン剤やサプリメントを飲むNG行動
  5. 夜更かしをするNG行動
  6. 激しい運動をするNG行動
  7. 性交渉や自慰によって射精をする

■やりがちな健康診断前の悪あがき。結果への影響は?

■よくある疑問Q&A【食事編】

Q.食べてはいけない時間にお腹が減ってしまった…。どうしたらよい?
Q.前日の夜の食事のおすすめメニューは?

■よくある疑問Q&A【お酒編】

Q.お酒を飲む場合、量はどれくらいにするべき?

■よくある疑問Q&A【睡眠編】

Q.前日の理想的な睡眠時間が知りたい!
Q.睡眠をとりすぎた場合、どのような数値に影響が出る?

■よくある疑問Q&A【運動編】

Q.普段から運動している場合、いつもどおりに運動してもよい?

■よくある疑問Q&A【薬編】

Q.常用している薬は普段どおりに飲んでもよい?

Q.服用していることを医師に伝えるべき薬はある?

■うっかり…! NG行動をしてしまった時の対処法

■NG行動と特別な行動を避けて、ありのままの診断結果を受けとめようサンプルテキスト

 

本文

健康診断前日の行動は、診断結果に影響があるの? 基本ルールを確認

そもそも健康診断を受ける際には、どのような準備が必要なのでしょうか。まずは健康診断の項目と、基本ルールを確認しましょう。

以下が、一般的な健康診断の項目です。会社員の場合、医師の判断で省略することが可能な項目もありますが、受けなければならない検査が年齢などによって決まっています。それ以外の検査は病院ごとにオプションとして用意されていることが多く、下記の項目以外にも様々なものがあります。

〈表〉一般的な健康診断の検査項目1)

  定期健康診断での扱い
診察等問診・身体診察必須
身長・体重必須
BMI 
腹囲必須
聴力必須
視力必須
血圧必須
胸部X線検査必須
喀痰検査 
血中脂質総コレステロール定量 
中性脂肪必須
HDL-コレステロール必須
LDL-コレステロール必須
肝機能GOT必須
GPT必須
y-GTP必須
代謝系空腹時血糖必須
血清尿酸 
ヘモグロビンA1C 
血液一般
ヘマトクリット値 
血色素量必須
赤血球数必須
尿・腎機能タンパク・糖必須
潜血 
尿沈渣 
血清クレアチニン 
心電図必須
眼底検査眼底検査 
腹部エコー検査腹部エコー検査 
胃部胃部エックス線検査 
胃カメラ 
痛風尿酸 

 

基本ルールは「食事は検診12時間前まで、飲み物は検診2時間前まで」

健康診断では「前日の夜9時まで(検診12時間前まで)に食事を済ませるように」という注意のみされることがほとんどです。食事は、胃の検査と血液の検査に影響を与えやすいからです。

バリウム検査や胃カメラによる胃の検査を行う際、胃の中に食べ物が残っていると、見えない部分が増えてしまいます。そうすると、胃の状態を正しく把握することができなくなってしまうのです。食事をすると萎む動きのある胆のう、ガスが発生したり動いたりする腸にも影響が出て、腹部エコー検査などが正しくできなくなる可能性もあります。

血液の検査では、食事をすることで血糖値や中性脂肪の数値が悪く出てしまうことがあります。その結果、実際は糖尿病ではないのに、「糖尿病の可能性がある」と診断され、再検査を余儀なくされることもあるのです。

 

〈表〉食事による検査への影響

検査への影響

胃、腸、胆のうなどを正しく見ることができないことがある

 
検査結果への影響

「血糖値」や「中性脂肪」の数値に影響が出やすい

 

飲み物は健康診断当日の2時間前までは飲んでもよいとされています。とはいえ、何でもよいわけではなく、前日の夜9時以降は水や白湯、ノンカフェインのお茶などのみにすることがルールとなっています。これも、胃の検査への影響があるからです。どうしても口が渇いてつらいという場合は、うがいで口内を湿らせて対応しましょう。

胃の検査がない場合であれば、検査の2時間前以降に水や白湯を摂取することは問題ありません。

 

健康診断前日に避けたほうがよい7つのNG行動

健康診断を受ける前日や当日に控えるべきことは、基本的には病院などから指示されます。上記で述べた基本ルールに加えて、さらに詳しい指示をされることもあるでしょう。

また、基本ルールの中でも見落としがちな行動や、基本ルールを守っていても数値に影響が出やすい行動もあります。そういった行動は、病院などによっては事前に注意事項として示している場合もありますが、何もいわれないこともあります。知っておくだけで検査や数値への影響を抑えられるので、是非おさえておきたいところ。ついやってしまいがちなNG行動と、その行動によってどのような影響が出やすいかを確認していきましょう。

 

NG行動1:飴、ガムなど固形ではないものを検診12時間前以降~直前まで食べる

考えられる影響・「空腹時血糖」の数値への影響
・「胃部エックス線検査」への影響

固形物ではないため、ギリギリセーフな気がしてしまう飴やガム。しかし、糖分が含まれているため、血糖値には影響を与えてしまいます。

さらに、ガムはバリウムを使った胃部エックス線検査にも影響を与えます。ガムを噛むと、咀嚼を助けるために唾液が出るだけでなく、消化をするための胃液がたくさん出てしまい、バリウムが胃の壁にくっつきにくくなるのです。そうすると、正しい検査結果が出なくなる可能性が高くなります。

 

NG行動2:脂質の多いものを大量に食べる

考えられる影響

・「空腹時血糖」「中性脂肪」の数値への影響
・胃部の検査への影響

前日の夜から健康診断が終わるまで長時間食事が摂れないからといって、脂質の多いものをガッツリ食べるのは控えましょう。血糖値や中性脂肪の数値に影響が出やすいだけでなく、脂質の多い食べ物は消化が悪いため、胃部の検査が正しくできない原因になってしまいます。たとえば、胃部エックス線検査では、油分でバリウムが胃にきれいに張り付かず、検査結果が不明瞭になってしまうことなどがあり得ます。

 

NG行動3:お酒やコーヒーを大量に飲む

考えられる影響

・「血清尿酸」「腎機能」の数値への影響

脂質の多い食事と同様に、時間のルールを守っていても、アルコールとカフェインの摂りすぎは健康診断の結果に影響を与えます。どちらも利尿作用があるため、体内の水分が外に出てしまうことで尿酸、腎機能の数値に影響が出ることが考えられます。

 

NG行動4:ビタミン剤やサプリメントを飲む

考えられる影響・「尿潜血」の数値への影響
・胃カメラの検査への影響

普段から服用しているビタミン剤やサプリメントでも、健康診断2日前からは控えておくのがベターです。特に気を付けたいのが、ビタミンC系のサプリとEPA系のサプリです。

ビタミンC系のサプリは尿潜血(尿に血が混じること)があった場合、その結果を打ち消してしまうことがあります。なお、ビタミンCは、カルシウム系のサプリにも入っていることがあるので注意が必要です。また同様に、ミカンやイチゴといった果物や栄養ドリンクなど、ビタミンCを多く含むものの過剰摂取も避けましょう。

EPA系のサプリは血液をサラサラにしてくれますが、それが健康診断の際には逆に危険に繋がってしまうことも。胃カメラ検査の際に胃の粘膜を傷つけてしまった場合、血が止まらなくなってしまう危険性があります。

 

NG行動5:夜更かしをする

考えられる影響・「血圧」の数値への影響

睡眠不足は交感神経を優位にして、血圧を高くしてしまいます。それによって、高血圧の診断が出てしまうことがあります。日頃から睡眠時間が短い人も多いでしょうが、少なくとも7時間は睡眠をとるべきです。

とはいえ、普段から眠りが浅い、なかなか眠れない、という人も中にはいるでしょう。

理想的な睡眠をとるコツについて、下記記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

 

NG行動6:激しい運動をする

考えられる影響・「肝機能」「尿タンパク」の数値への影響

筋トレなどを日課にしている人はやりがちですが、筋肉に負荷がかかる運動は前日にはNGです。傷ついた筋繊維を修復しようとする働きで、肝機能の数値が悪く出てしまうことがあり得ます。普段からやっていても、健康診断の前日には控えてください。

 

NG行動7:性交渉や自慰によって射精をする

考えられる影響・「肝機能」「尿タンパク」の数値への影響

男性の場合、前日の性交渉や自慰による射精をすることで、尿にタンパク質(精子)が混ざってしまう可能があります。尿タンパクが出る原因である腎臓の疾患を疑われてしまうかもしれません。

 

やりがちな健康診断前の悪あがき。結果への影響は?

健康診断前日の過ごし方も重要ですが、数日前からの“悪あがき”は健康診断の結果に影響があるのでしょうか。受ける直前になると、少しでも数値をよくしたい…と考えてしまいがちですが、よかれと思ってやった悪あがきが、かえって数値に悪い影響を及ぼすこともあるのです。

たとえば、「健康診断の数日前から食べる量を減らす」「一時的に禁酒・禁煙をする」「一時的に運動をする」といったことです。

やってしまいがちな“悪あがき”の効果の有無や悪影響については、以下の記事で解説しています。チェックしてみてください。

 

よくある疑問Q&A【食事編】

 

Q.食べてはいけない時間にお腹が減ってしまった…。どうしたらよい?

A.水は飲んでもOKです。水やノンカフェインのお茶を飲み、空腹をまぎらわしましょう。
空腹をまぎらわせるために炭酸水を飲む人もいますが、胃部エックス線検査をする場合は避けましょう。バリウムは、お腹に炭酸が残っていると余計に泡立ってしまうことがあるためです。気分が悪くなってしまいますよ。

 

Q.前日の夜の食事のおすすめメニューは?

A.消化のよいものがおすすめです。健康診断時に胃に食べ物が残らないようにしましょう。
たとえば、柔らかめのご飯やうどん、野菜スープ、豆腐など。時間を守ればお肉なども食べてよいですが、脂身の少ないササミやモモなどを選ぶとよいでしょう。

 

よくある疑問Q&A【お酒編】

Q.お酒を飲む場合、量はどれくらいにするべき?

A.“純アルコール量”20gが目安。ビールなら500ml程度までです。
純アルコール量とは、お酒に含まれるアルコール量のこと。摂取量×アルコール度数×0.8で計算できます。くれぐれも二日酔いになるまで飲まないように気をつけてください。

 

よくある疑問Q&A【睡眠編】

Q.前日の理想的な睡眠時間が知りたい!

A.健康診断は、日頃の健康状態を診るためのものです。普段と同じくらいの睡眠時間が適切です。
ただし、普段から7時間くらいは寝ていてほしいですね。

 

Q.睡眠をとりすぎた場合、どのような数値に影響が出る?

A.いつも以上にたくさん寝ても健康診断への影響はありません。
よく寝て、健康診断に備えましょう! ただし、睡眠不足は影響が出やすいので注意しましょう。

 

よくある疑問Q&A【運動編】

Q.普段から運動している場合、いつもどおりに運動してもよい?

A.日課になっていても筋トレは避けてください。
ただし、20分以内のジョギングやサイクリングなど、軽い有酸素運動なら普段どおりに行っても大丈夫です。

 

よくある疑問Q&A【薬編】

Q.常用している薬は普段どおりに飲んでもよい?

A.前日までは飲んで大丈夫です。
当日の朝に飲む薬は、胃の検査時に写り込んでしまう可能性があるので、事前に主治医に確認しておきしょう。血糖値を下げる糖尿病の薬は、低血糖の発作が起こる可能性があるので飲まないように指示されることが多いです。逆に高血圧やてんかん、精神安定剤などの発作を抑える薬は服用を勧められることが多いでしょう。その場合、朝の早い時間に飲むことになるので、時間に関しても主治医への相談が必要です。

 

Q.服用していることを医師に伝えるべき薬はある?

A.普段どんな薬を服用しているか伝えるために、お薬手帳を持って行きましょう。
また普段サプリや市販薬を服用しているなら、何を飲んでいるか伝えられるようにしておきましょう。当日飲んでしまった場合は、必ず受付や医師に申告してください。

 

うっかり…! NG行動をしてしまった時の対処法

気をつけていても、普段の習慣で「夜遅くに食事をしてしまった」「朝にコーヒーを飲んでしまった」など、上記で紹介したNG行動をしてしまうこともあるでしょう。

健康診断を受ける日をずらすのが一番よい解決策ですが、そう簡単に日程を変更することはできません。「受付での自己申告」が唯一の解決策といえます。

内容によっては胃の検査が行えない場合があるので、早めの相談をすることが大切です。何かを食べた、飲んだ、服用した場合は「それが何か」「量」「時間」を伝えてください

 

ごまかすのはNG。再検査になってしまうだけ

食事をしてしまった場合、黙っていても、胃カメラなどの検査があればすぐにバレてしまいます。胃の内容物によっては全容が見えず、十分な検査ができないということになりかねません。

血液検査の数値に影響があった場合、それが病気を疑われるものであれば再検査を勧められます。そうなると、また時間を作って健康診断や診察を受ける必要が出てくるので、結局自分に跳ね返ってくることになってしまうのです。

 

NG行動と特別な行動を避けて、ありのままの診断結果を受けとめよう

健康診断の結果をよくしたいと、直前に“悪あがき”をしてしまう人が多くいます。しかし、健康診断はテストではありません。状態に応じた、適切な結果を得ることが目的なのです。それゆえに、誤って「よい結果」が出てしまうことが一番怖いのです。

何かに異常があっても、がっかりせずに「早く見つかってよかったな」とポジティブに捉えてみましょう。忙しく働いていると、何か小さな不調を感じても放置する人が多くいます。そんな人こそ1年に1度の健康診断をよい機会だと思って、ありのままの健康状態をチェックしてください。そして、医師のアドバイスを参考にしながら、健康でいられるための工夫や努力をしていきましょう。

企業に所属している限り、社員には健康でいることが求められます。たとえば血糖値が不安定だと、高所の建設作業や運転業務ができなくなるなど、仕事に支障をきたす場合もあるのです。

自分のためにはもちろん、家族や職場の人のためにも、健康診断をきっかけに自分の健康を正しく振り返ってみてくださいね。

この記事の執筆協力

執筆者名

井上智介(いのうえ ともすけ)

執筆者プロフィール

産業医・精神科医。島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科などのプライマリケアを学ぶ。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動。産業医として毎月約30社を訪問しているほか、精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動中。精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務している。

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